×××× IN MY HEAD

筒井です。夢はお笑い芸人のままです。

ルーカス

 

 

拝啓 ルーカス

 

 

 

 

まあお互い上手くやろうよ。

toeでも聴きながら。

 

 

 

 

 

   友達にルーカスというポルトガル人がいる。正式には、いた。いた証拠なんてものは僕のラインの中を覗くか、一緒に撮った写真を載せるくらいしかできないけれど、理由が理由なだけに、なんだかシャイなルーカスに申し訳なくてそうもいかない。iMacに二人で撮った写真が数枚あるから、暇な時に取り出して、このブログに貼るとするよ。

 

 

 

 

   ルーカスは僕が留学中に中国で出会った。飲み屋で外国人パーティみたいなものを開いていたが、僕はこんな性格だから結局上手く馴染めず、それなりな挨拶なんかをしながらも「疲れるな。」と感じて端っこに座っていると、大男が話しかけてきてくれた。「寂しくないの?」だか「どうしたの?」だか覚えてはいないけど、そのどちらかだったはず。身長185くらいある、立派なヒゲをたくわえた色白でいわゆる「外国人」だった。日本語を勉強していたから、僕は緊張もせず日本語で話すことができた。そりゃもう達者でさ、すき家のバイトなんてレベルじゃなく、学校の先生に今すぐなれるくらいの語学力と、何より話すテンポや、仕草や、雰囲気から彼の人柄が滲み出ていた。

 

 

 

 

 

   そんなことはさておきってくらい、ルーカスはバンドが好きだった。cinema staffrega、envy、アジカン、LITE、宇宙コンビニ、phono tones、バンアパアンチェイン、まだまだ上げればキリがない。シューゲも大好きで、astrobriteのcrasherは夏に聴きたいねだとか、とにかくポストロック・シューゲ寄りの邦楽が大好きで、その知識量はその辺の音楽好きを遥かに上回る「オタク」だった。当時「残響」全盛期だったから、ハイスイノナサやcabsなんかも話題に上がり、二人で盛り上がった。そして僕が飲み屋で突然大声を出したのは彼が「toe」を何より一番愛してると言ったからだ。僕は自らハグをした。まさか中国の汚い居酒屋で「toe」の話をポルトガル人とするとは思わなかったし、音楽は国境を越えるということを、本当に体験してしまった。僕は約束をした。必ず「toe」のライブに行く時は、僕と行こうと。まず僕が連れて行くと。

 

 

 

 

 

 

   ルーカスは一年後、大学院生のような形で急に日本に留学をした。某有名外語大に入学し、西東京のアパートに住み、僕に連絡が来た。「日本に来たよ、ライブ行こう。」と。僕は早速ライブを調べた。アジカンやシネマじゃなく、勿論「toe」だ。日比谷野外音楽堂で2ヶ月後くらいに開かれるENVYとの対バンを見つけ、チケットを二枚買った。当日僕は勿論「toe」のTシャツを着て日比谷駅を降り、確か当時、僕の髪色は銀色だったけれど、それよりずっと目立つほどガタイのいいルーカスに再開した。ルーカスはいつもより少し早口で、テンションが上がり、ビールも飲んでいた。二人で缶ビールを買い足し、僕らは席についた。丁度今頃の時期だった気がする。僕らは半袖だった。僕はENVYを全く知らなかったけれど「toe」が始まれば、それらを見つめる僕らに会話は無く、飲み物もほとんど手にせず、ひたすら憧れの音楽に浸った。ルーカスは終始、デカい体をゆらゆら揺らしていた。そしてやはり終盤「グッドバイ」が流れた瞬間、やっぱり僕は泣いたし、ルーカスも泣いていた。とは言っても僕とは涙の価値が違うよな。ポルトガルから応援してたバンドを、生で観れたんだもん。そんなルーカスにお土産を渡し、「チケット代は奢るよ。」と気前のよさをちらりとアピールした。次はアジカンのライブを観たいらしく「ワールドワールドワールド」は芸術作品だとか何とかと酔っ払いのポルトガル人に語られながら、日比谷を後にした。

 

 

 

 

   結局、それ以降お互い連絡も疎遠になってしまい、フェイスブックで誕生日を祝う程度の仲になった。とは言ってもたまに「元気?」なんてラインもしたり、別の友人から「ルーカスが会いたがってたよ!」と声を貰ったりした。もしかしたら、僕以外の誰かと日本にいる時にはアジカンを観てしまったかもなあと、罪悪感と寂しさみたいなのも感じた。ただ、絶対またアルバムのツアーとか、記念ツアーをやるから、誘おうと思ってはいた。うん、きっと。

 

 

 

 

ルーカスは少し先に、天国に行った。

 

 

 

 

 

 

 

  なんだか僕にはよくわからない重たい病気だった。白血病のようなものだったのかな。いつのまにかルーカスはポルトガルに帰り、僕がそれを知ったのはもう意識が無いような時だった。その時に送った、ルーカスでも読むのに苦戦するくらいの長文日本語ラインは未だに未読のままで、時間が止まっている。それが2017年の夏のこと。僕はたまたまさっきフェイスブックを開いた時に、ルーカスの友達がでてきた。ふと思い出した。そうだ、俺にはポルトガル人の親友がいたんだなと。

 

 

 

 

   ルーカスさあ、最後に俺らが二人で聴いた曲も「グッドバイ」ってのはちょっとシャイな癖にかっこつけすぎじゃないかなと思う。一緒にスタジオ入りたかったなあ。黒のテレキャス、生で観たかったな。わざわざ持ってきたらしいね、ポルトガルから。御茶ノ水も案内したかった。いや、そういえば一緒にサンプラー観にいったか。俺のDL4、いつ渡せばいいんだよ。もう壊れちゃったよ。空間系のエフェクター欲しがってたよねえ。

 

 

 

 

少し、寂しくなった夜でした。

そんな僕の親友のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

11. Toe - Good Bye // New Sentimentality - YouTube