×××× IN MY HEAD

筒井です。夢はお笑い芸人のままです。

大阪を泣いて駆ける

 

  涙を浮かべることが増えた。

 

 

 

 

 

 『ショーシャンクの空に』を観ても泣かなかった僕が、本を読んだり、音楽を聴いたりするだけで目頭がアツくなる現象・・・いや「症状」が多発しているのだ。『恋空』や『赤い糸』を見た女子が「めっちゃ泣けたよね!」とか何とか言っているのを「千円で流せる涙なんて安いね。」と心で笑っていた十数年前。絶賛中二病を拗らせていた僕だ。言い訳がましいが、当時は本心でそう思っていた。どうして、わざわざ感動するものに触れたくなるのだろうか。辛い時に、無理に笑いたい気持ちはわかるけれど、無理に泣きたくなるのは違和感があった。

 

 

 

 話は脱線するが、そんな大病を患った僕も、高校の卒業式には体育館で泣き崩れた。高校デビューを果たした僕にとってのスターダムが今日で幕切れだなんて、信じられなかった。いや、単純に寂しかったんだろう。それを見た後ろに立つ友人たちが次々と泣き崩れるもらい泣きのコンボを作り出していた。「筒井がバカみたいに泣いているのは釣られた。」と口を揃えて友人が話していた。いいことをしたわけじゃないが、いいことをしたような気分だ。僕だって泣きたくて泣いたわけじゃないのにな。溢れ出てきたんだ。涙ってそのくらい価値があるものじゃないの。千円で流す涙と、三年間を振り返って流す涙には差があるはず。価値ある涙だ。なんて思った。いや、思ったかなあ。話の都合上、思ったことにしといてもらっていいかな。

 

 

 

 そんな価値ある涙がここ最近デフレを起こし始めた。デフレは使ってみたかった言葉なだけで、単純に「バーゲンセール」くらいの意味合いでいい。僕の涙がいきなり「バーゲンセール」を始めたのだ。それも期間限定ではない。毎日閉店セールみたいな勢いだ。何を考えているか僕の体は、制御不能になっている。

 

 

 

 本人とそんなに親しくないので、リンクを貼ることは控えるけれど、ある読者のブログの記事に、お笑いコンビについて書かれたものがあった。文字を追うごとに涙が止まらなくなりそうだったから、一度ブラウザごと閉じた。数時間後、結局続きが気になって初めからまた読み直した。案の定、泣いた。「ほらね。」って声が出るほど予想ができていた。人の成功体験や、苦労話に感情が揺さぶられすぎている。揺れすぎて酔っている、おかしくなってしまっている。その後しばらくして、同一のブログ記事で書かれていたある曲を聴いて、また泣いた。なんと言えばいいのかわからないけれど、素人のブログに泣いてしまう僕が今『恋空』を観たらどうなってしまうのだろう。考えるだけで恐ろしくなった。

 

 

 

 

 十年前、音楽を聴いてもライブに行っても涙が出なかった僕はここ最近になって「流すはずだった涙」を取り返そうと泣きまくっているのかもしれない。そんな昔のことを思いながら昨日ブログを書いたら、書きながらまた涙が溜まっていた。もう僕の涙腺は品切れになるまで「バーゲンセール」を続けるらしい。

 

 

 

 大阪に住んでいる人生で一番好きな後輩の苦労話を聞いた帰り道、夜中三時、ベロベロでボロボロ泣きながらホテルに帰った。そして今は新幹線で名古屋を通り過ぎるくらいだけれど、思い出して目頭を熱くしている。

 

 

 

 前言撤回したい。涙に価値とかは無い。デフレもしない。大量生産したところで価値が下がらない唯一の存在だ。とことん発注し、生産しよう。

 

 ああ、東京へと帰ります。