×××× IN MY HEAD

筒井です。夢はお笑い芸人のままです。

みんなどこかへ

 

15人目に正社員として入社した僕のいる会社は今日、151人になった。まさか数年でそんな規模になると誰が予測しただろう。目まぐるしいという言葉が似合うような毎日にじっと下を向きながら体をナナメにして歩いてきた。もう僕の知ってるカイシャではない。知らない人はたくさんいるし、誰もがリベロみたいな働き方ではない。ああ、これがカイシャだなあと思う。

 

 

 

本を読まなくなった。近所のブックオフが改装するからと本を全品70%オフという賞味期限切れの商品のような売り方をしていた。結局、あまり時間がなくて買えなかった。実際何を読みたいのかもわからないし、好きな作家がどんな風だったかも忘れるほど、読書をしなくなった。読書はある種のバフだった。巷で言われるように、手軽に人が丹精込めた作品に出会える上に、本当に感情は豊かになる。本当に面白すぎる作品に出会って、駅のホームで待ってる間に読みながらそのまま電車に乗って、降りてそのまま歩きながら読みたくなるほど没頭する作品にたくさん出会ってきた。気づけばより手軽な情報をまとめサイトだとかで読みながら、いつの間にか会社に着いている日々が何年も続き、僕の習慣は消えた。TSUTAYAでCDを視聴することや、立ち読みで思わぬ出会いをすること、人と同じように作品とも疎遠になり、出会いのきっかけがなくなった。そのうち作品のマッチングアプリが出てくるんじゃないかな。もしかすると本やCDが好きというより、それらを試食する時間が楽しかったのかもしれない。そんな機会が時代と自分の怠惰によって消えた。YouTubeやサブスクで数秒聴いて終わり。もう目の前にあるからこそ、じっくり味わうことがなくなるという贅沢な病。あの頃千円で5枚を選ぶか、シングルを買うか悩んでいた俺よ。留学から帰ったその足でレコードショップとTSUTAYAに行きひたすら散財した10年前の俺よ。そんなことをたまに思い出せるだけ、まだ無事なのかもしれない。試食を増やそう。

 

 

 

先日、歩いている最中に数秒に1回謎の目眩に襲われて思わず一緒にいる友人に「ぶっ倒れるかもしれん。」と真面目なトーンでヘルプを出した。ただの鉄分不足と寝不足ならよい。失って気づく、健康の素晴らしさよ。

 

 

 

春がもう来た。雨が続いて季節が変わったような風が吹いている。皆が花粉症に苦しんでいる中、万年無事だった俺は今日、何故か鼻水が止まらなくなった。これでようやく多数派の仲間入りを果たしたかもしれない。同じ苦しみを味わう同士、春の共通話題ができた。また一つ、共通言語を手に入れた。こうして老人になり、腰の痛みや特効薬かなんかでまた共通点を見つけていくのだろう。オススメの薬の話なんかしちゃって、あそこの病院がどうとか、院長がどうとか、そんな話をするようになるんだ。

 

一方で土曜日に俺の家に来た野口は「病院の看護婦さんが可愛かった。」なんて話をする。それでいい、それがいい。

 

このまま30歳になり、このままの共通言語でいこう。