×××× IN MY HEAD

筒井です。夢はお笑い芸人のままです。

っていうわけじゃない

 

いい加減冒頭の挨拶はやめにする。

 

 

 

『っていうわけわけじゃないんだけど。』

 

 

   基本的に態度は大きいものの、身長と肝は小さく、嫌われないようにギリギリを生きているつもりで約5年が経過した。(自分から嫌われに行くことはあるとする。)幸いなことに「厨二病」「拗らせてる」「痛い」と言われながらもそれを面白がって「まぁ、それが筒井だよね。」と半ば呆れ気味な感想を流し、僕と今も遊んでくれる人が若干名いるということは、まあそれなりに僕は幸せなんだろう。

 

 

   昔から八方美人だぶりっ子だなんだと言われ、そんなことが原因で何故だか小学校六年間ひたすらイジメられ続けた結果、八方美人は更に加速をし続け、ぶりっ子の自己暗示をかけ続け、どうすればギリギリで嫌われないのかとどうすれば僕の魅力(友人として)が伝わるのかを常に意識するようになった。(並行して人の好き嫌いも倍々ゲームで増えた。)僕が空気や距離感の読めない人がこの世で何よりも嫌いなのは、僕が読めてるものを察することができない苛立ちによるものだろう。なんて自己本位的なんだろうか。でも仕方がないのだ。それでいてこうやって開き直るからよくないのも再三注意されてきた。わかってはいるのだ、わかってはね。そうなんだけどね。

 

 

   ついこの間、僕の直属の後輩にあたる子が仕事で大きめのミスをした。僕は後輩に対して怒るのは嫌だし、僕も怒られるのが嫌だ。本当に嫌だ。それをわかってほしい気持ちもあって厳しく当たったりもしない気でいたから、入社してから一度も厳しくすらしていない。そもそも怒られて伸びるようなタイプはこの世に存在しないと思っている。ただ今回のミスはわりと大きかった。二週間前から僕が「ミスらないでね、忘れないでね。」と忠告していたことを忘れてしまったのだ。ここにも大きな罪はあり、後輩はひどく落ち込みながら何度も謝ってきた。ここを厳しく対応するかどうか悩んだけれど、一度ちゃんと注意してみることにした。

 

 

   「別に反省してほしいわけじゃなくて云々」

   「○○くんだけが悪いわけじゃなくて云々」

   「嫌味とかじゃなくて忙しかったし云々

 

 

   ひとしきり説明したあと、後輩はしっかり僕に謝ってきた。謝罪なんて何も面白くないけれど「大丈夫。」と一言声をかけて仕事に戻った。その後、タバコを吸っていると後輩くんが喫煙所に来て再び謝ってきた。もうその話は終わっている。終わった話は大丈夫、また頑張ろうぜと声をかけた。そして夜頃、僕の仕事に緊急対応の案件が飛び込んできたため、一旦作業中の補填(後輩くんのミスのリカバリ)を止めることになった。その際「ちょっと今これで忙しいから、こっち頼める?」と何気なく後輩に伝えた瞬間に僕は気づいた。デリカシーが無さすぎた。パソコンの画面には思いっきり後輩の担当案件の報告書のようなものが広がり、それを見ながら「俺今忙しいから手伝える?」なんてただの嫌味でしかない。緊張が走り、これは明らかに悪口のように聞こえてしまった。

 

 

   「嫌味とかじゃないんだ!」

   「忙しいってそういうわけじゃなくて!」

 

 

  慌てて釈明していると後輩は我慢できなそうに笑い出した。「筒井さん、言葉に保険かける癖ありますよね。そんな傷つかないですよ(笑)」みたいなことを言われた。僕は言ってしまったあとに後悔することが多かったせいか、何か少しでも気に障りそうなことを言う前の前置きがやたらと長くなり、本題が霞みに霞む癖がある。傷つかないようにという相手を思って言う言葉じゃなく、僕が嫌われないようにする僕の防御技のつもりなのだろう。これを一日中発動してしまった故に、後輩に心配された。守りすぎらしい。格ゲーじゃあるまいし。

 

 

 

   大人になるとお世辞や気遣いをした言葉を選ぶようになる。というか選ばなきゃ「人」としての輪に入れてもらえなくなる。そうは言ってもそればかりしていると気を遣いすぎだとか自分が無いとか思われ、いい塩梅をひたすら探しながらジジイになって、気遣いが気疲れに代わる。なんというか不満 "っていうわけじゃないんだけれど" どうもそういう綺麗な付き合い方ができない。営業は別だ。気遣い120%で全力の守りを見せればいい。親までもが僕が営業職でそれなりに売れるなんて思っていなかっただろう。天職となり得た訳は、この防御技のおかげだ。

 

 

   きっとそれでも治らず、延々と程よい距離を探しながら迷い、心を開けば踏み込まれ、距離を置きたくなる恐怖のジレンマに苛まれて、変わらず愛想笑い振りまき、どこまで本音で話して、どこまで気遣いをしていいのかをふやけた物差しみたいなもので測り続けるのだろう。

 

 

 

   どうにかしたい。

 

 

 

 

   っていうわけでもない。